転生したのに0レベル
〜チートがもらえなかったので、のんびり暮らします〜


212 アイスクリームを作ったんだけど……



「お母さん。僕、冷たいお菓子ができる魔道具を作んなきゃいけないから、スティナちゃんと遊んでて」

「ええ、いいわよ。それじゃスティナちゃん、ルディーンが美味しいお菓子を作ってくれるまで、おばあちゃんと遊んでいましょうね」

「あい!」

 こうして僕は、スティナちゃんたちと別れて、いつもの部屋へと向かった。


 僕が作ろうって思ってるのはアイスクリームって言う牛乳や卵、それに生クリームを使って作る冷たいお菓子なんだ。

 何でこれを作ろうって思ったのかって言うと、生まれ変わる前の僕がまだ小さいころ、一緒に住んでたおばあちゃんと一緒にこのお菓子をよく作ってたんだよね。

 って言うのも、お家にそのお菓子を作るおもちゃがあったからなんだ。

「取り合えず、あのおもちゃとおんなじことができる魔道具を作んないとね」

 僕が持ってたおもちゃは、冷凍庫に入れて凍らせた入れ物の中に材料を入れて、そこに羽根みたいなかき混ぜる棒とそれを回すハンドルがついた蓋をして、そのハンドルをぐるぐる回してると、入れた材料が凍ってアイスクリームが出来上がるってやつだったんだよね。

 でもね、それとおんなじやつを作ってもダメなんだ。

 何でかって言うと、そのおもちゃだと一度にほんのちょびっとしかできないんだもん。

 だから僕は、あれをもっとおっきくしたやつを作ろうって思ったんだ。


「一度にちょびっとしか作れなかったのは、きっといっぱい作ろうと思ったら中々凍んないからだよね?」

 材料がちょびっとだったらすぐに凍るけど、いっぱい入ってたら中々凍んないもん。

 だからあのおもちゃは材料がちょびっとしか入らないようにちっちゃな入れ物しかついてなかったけど、今回はみんなが食べる分を作んないといけないだろうから、ある程度おっきな入れ物で作りたいんだよね。

 でも、そしたら中々凍らなくなっちゃうよね?

「おもちゃん時みたいに入れ物を冷凍庫に入れて凍らしたのを使ってたら、アイスクリームができちゃう前に溶けちゃうよなぁ」

 そう思った僕は、材料を入れるとこを氷の魔石で冷やすことにしたんだ。

 これなら氷なんかよりすっごく冷たくする事もできるし、魔道具を作る回路図に抵抗の記号を入れておけば、出来上がったアイスクリームをそのままその魔道具で冷やしておく事ができるもんね。

 と言う訳で、まずは入れ物作り。

 いつもだと物食べ物を作る魔道具の時は材料に銅をよく使ってたんだけど、今回は鋼を使うことにしたんだ。

 何でかって言うと、おもちゃとおんなじ様な作り方をするとなると、中にかき回す羽根を入れることになるよね?

 その羽根は凍って硬くなってきたアイスクリームをかき回さないといけないから、どうしても鋼で作んないといけないんだ。

 そうなるともし銅でアイスクリームを作る入れ物を作ったら、その羽根がぶつかった時に傷がついちゃうもん。

 だから今回は、入れ物も鋼を使うことにしたんだ。


 おもちゃよりいっぱい作んなきゃいけないって言っても、作るのがアイスクリームだからおかずを作る時みたいな大きな鍋を使うわけじゃ無いんだよね。

 それに形も普通の鍋みたいにすると真ん中が中々凍ってくれないだろうから、ちょっと工夫しなくちゃいけないんだよね。

「う〜ん、やっぱり長細い入れ物がいいかなぁ」

 そう思った僕は、直径12センチで高さが25センチの薄い鋼でできた入れ物をクリエイト魔法で作った。

 でね、それがすぽって入る、四角い木でできた入れ物も一緒に作ったんだ。

 何でかって言うと、この入れ物はアイスを作る時や残ったのを入れておく時にすっごく冷たくなるでしょ?

 だからこうしておかないと、触れなくなっちゃうからなんだよね。

 そしてその木の入れ物に魔道リキッドを入れる器と小豆くらいの氷の魔石、そして中の温度の調節用のつまみが付いた魔道回路図が書いてある金属板をつけて、それを中の鋼の入れ物につなげば材料を入れるとこは完成だ。


 次は蓋作り。こっちは入れ物と違って二つ作んないといけないんだよね。

 何でかって言うと、アイスクリームを作ってる時にかき回す棒が付いてるのと、残ってるのを置いておく時にする能登を作んないといけないからなんだ。

 とは言っても、置いておく方は簡単だ。だって木の入れ物にカパッてはまる木の蓋を作って、銅の板を張っただけだもん。

 木だけでも良かったんだけど、こうしとけば銅の板が冷えて中の温度が上がりにくくなるし、銅なら中のアイスがついちゃっても簡単に洗えるからって思ったからなんだ。


 さて、次にかき回す棒が付いた方の蓋作りだ。

「何度も作るんだったら、手で回してると疲れちゃうよね」

 そう思った僕は、この蓋も魔道具で作る事にしたんだ。

 と言う訳で、まずは羽根の突いたかき混ぜ棒作り。

「確かこんな形だったよね?」

 何となくしか覚えて無いかき混ぜ棒を木の板に書いてみた。

 でね、それを今度はさっき作った入れ物に使えるようにって、書き直す。

「とりあえずこれで作ってみるかな?」

 それを何度か繰り返して何とか気に入る形が出来上がったから、僕はクリエイト魔法でそのかき混ぜ棒を作ってみたんだ。

「ちょっと羽根が薄すぎるかな?」

 あんまり重くならないようにってちょっとの鋼で作ったからなのか、羽根が薄くなりすぎちゃったんだよね。

 と言う訳でやり直し。

 今度は羽根の量を少し減らして、心棒ももうちょっと細くしてみたら何となくいい感じのが出来上がったんだ。

「うん、これなら大丈夫そうだね」

 そう思った僕はそのかき混ぜ棒に今までに何度も作ってる回転の魔道具を取り付けてかき混ぜようの蓋も完成したんだ。


 僕は出来上がったアイスクリームを作る魔道具を持って台所へ。

「あっ、ルディーンにいちゃだ」

「あら、魔道具とやらはもうできたの?」

 そしたら、お母さんたちはまだそこで遊んでたんだ。

 だから僕、何でお外で遊ばないの? って聞いたんだよね。

 そしたら、

「外で遊ぶと熱いもの。その点、ここはルディーンが作った魔道具のおかげで涼しいでしょ」

 だって。


「それで、その箱がお菓子を作る魔道具なの?」

「うん、そうだよ。でもね、実験して無いから、まだうまく作れるかどうか解んないんだ」

 ちっちゃなおもちゃをそのまま作ったら絶対うまくできるって言えるけど、これはかなり違うものになっちゃってるもん。

 だから僕、とりあえず作ってみる事にしたんだ。


 この世界でアイスクリームを作るのはこれが初めてだ。

 でもね、何を入れたらできるのか解ってるし、実を言うと材料のどれをどれくらいずつ入れたらいいかも解ってるんだよね。

 何でかって言うと、前世の子供の頃に使ってたアイスクリームって言うお菓子を作るおもちゃには材料を入れるカップがついてて、それに牛乳とかを入れて計るのはいっつも僕の役目だったからなんだ。


 作るアイスクリームがどんなのかによって材料の量は変わってくるけど、僕んちで作ってたのはおもちゃに付いてたカップで3杯の牛乳と1杯の生クリーム。それに溶いた卵とお砂糖を入れてたんだよね。

 もし濃い味のアイスクリームを作りたかったら生クリームを多くすればいいし、あっさりしたのを造りたかったら牛乳だけで作ればいいんだって。

 後は卵とお砂糖なんだけど、卵はお母さんがいっぱい使うと困っちゃうから二個にしてねって言ったからそんだけ。

 でね、お砂糖は全部混ぜた後に舐めてみて、こんなもんかな? って感じになるくらいまで入れてアイスクリームの原液が完成したんだ。


「それじゃあ動かしてみるね」

 今回は僕が作るから魔道リキッドを使わずに魔力を魔石に注いでスイッチオン。

「どれくらいで出来上がるの?」

「解んない。でも、入れ物は冷凍庫よりもっと冷たくなるようにしておいたから、すぐできると思うよ」

 初めて作るんだからどれくらいかかるかなんて、当然僕にも解んないよ。

 でも、そう言えばこの形だと中が見えないから出来たかどうかなんて解んないよね。

 だから僕、数分毎に魔道具を止めては蓋を開けて中を確かめたんだ。

 そしたら初めは液体だったのがだんだんトロッとしてきて、最後にはちょっと固めのソフトクリームくらいになったんだよね。

 と言う訳で、取り合えずここでアイス栗ー布中からかき混ぜ棒を取り出したんだ。

 だって、このまま入れっぱなしにしたら固まっちゃって取り出せなくなっちゃうもんね。

 で、そのかき混ぜ棒に付いたアイスクリームを木のさじで入れ物の中に落として行って、今度は普通の蓋をした。

 これで後ちょっとしたら、完成だ。

「ルディーンにいちゃ。それ、たべていい?」

 魔道具を見ながら僕がそう思ってたら、スティナちゃんがこんな事を言い出したんだよね。

 スティナちゃんが言うそれって言うのはさっき取り出したかき混ぜ棒。

 おさじでなるべく取りはしたけど、洗った訳じゃないから当然そこにはまだいっぱい付いてるんだよね。

 でも外に出したせいでかなり溶けちゃってるし、これを食べようと思ったら棒を舐めるしかない。

「だめだよ。鉄でできてるから危ないもん」

「え〜!」

 でも羽根がついてるから、危ないかも知れないよね。

 だからダメだよって言ったんだけど、スティナちゃんはよっぽど食べたかったのかぷんぷんだ。

「う〜ん、じゃあさ、まだできあがって無いけど、中のを食べてみる?」

「いいの?」

 今の状態でもソフトクリームみたいなもんだから食べられない事は無いんだよね。

 と言う訳で、僕は一旦氷の魔石を止めて中のまだ柔らかいアイスクリームを木の器に入れて、みんなで食べることにしたんだ。

「おいしぃー!」

「まぁ。生クリームみたいなお菓子だと思ったけど、食べてみるとまるで違うものなのね」

 でね、それを食べたスティナちゃんとお母さんはとっても嬉しそうな顔をしてたんだよね。

 でもさ、折角作ったんだから最初はちゃんとしたのを食べさせたかったなぁ。



 今の主流はメレンゲを作ったり生クリームをホイップしたりした者を混ぜて凍らせたお手軽手作りアイスクリームみたいですね。

 でも、私としてはどうせ作るならやっぱり本来の作り方だろうと思って凍らせながらかき混ぜて空気を含ませる方法を取りました。

 それにこれなら、材料を混ぜて魔道具を起動するだけで、誰でも作れますからね。


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